営業ノルマがきつかった日々|強引な提案で心が削れていった話
1話で「土俵を変えた」はずの私が、なぜまた数字に追われたのか。転職後に踏んだ“営業会社の沼”と、そこから抜けるために気づいたことを書きます。
「営業が向いていない」から水道業界を選んだはずなのに、なぜ私はまた“数字の沼”に戻ったのか。
1話の最後に残したこの問いから、2話は始まります。
答えは、拍子抜けするほど単純でした。
「職種」は変えたのに、「会社の土俵」は営業会社のままだった。
転職の経緯は1話(水道業界を選んだ転職理由)に置いています。
現場に出ても、頭の片隅にあるのはいつも営業ノルマ。
壊れた蛇口を直す喜びより先に、「この現場でいくら粗利が出るか」を計算してしまう。
そんなふうに、心がじわじわ削れていった日々の話をします。
営業ノルマのきつさは、「能力」ではなく「会社の土俵」の問題だった
職種を水道業界に変えても、会社の評価制度が営業会社のままなら、また数字に追われます。苦しさの原因は、あなたの力不足ではなく、戦っている土俵の方にあるのかもしれません。
📜 営業が向いていない人の、生き残り戦略
口が上手い人と同じ土俵で戦わない。資格=武器/朝活=整える
営業ノルマが、想像以上に重かった
粗利の目標が、毎月やってくる。それだけで、頭の中は現場より数字でいっぱいになりました。
朝礼や会議で、その数字が共有される。誰かが名指しで責められるわけでも、大声が飛ぶわけでもありません。
リクルド(旅する書庫番)
現場仕事だと思って入ったのに、
気づけば頭の中は、ずっと数字だった。
それでも、未達の名前が並ぶと、その場の温度が少しだけ下がる。それが、はっきり分かりました。
長老チャットラー
叱られなくても、
数字が並ぶだけで、場の温度は変わる。
「数字が足りていない」という事実だけで、空気が重くなる。営業ノルマがきついと感じ始めたのは、この頃でした。
「どう直すか」より「どう粗利を出すか」。思考が毒されていった
やがて、考える順番そのものが変わっていきました。
本来なら、まず器具の状態を見て、修理か交換かを判断する。
それなのに、「どう直すか」「交換すべき状態か」を考える前に、「いくら粗利が出るか」が浮かんでくるのです。
本来、水道職人の仕事はシンプルです。
どこが壊れているかを見る。
使用年数や状態を確認する。
修理で済むのか、交換した方が長く安心して使えるのかを判断する。
そのうえで、お客様に選択肢を説明する。
本体交換を勧めること自体が、悪いわけではありません。
使用年数が10年を超えていたり、ガタつきや緑青が出ていたり、修理の際に器具を傷つける可能性があるなら、交換を提案する方が誠実なこともあります。
問題は、そこではありませんでした。
状態を見て交換を勧めるのではなく、
数字を作るために交換を先に考えてしまう。
苦しかったのは、提案そのものではなく、考える順番が数字に寄っていたことでした。
リクルド(旅する書庫番)
直し方より先に、
粗利の計算をしている自分に気づいた。
交換が必要な現場もあります。
でも、必要性より先に数字が浮かんでしまうと、提案の言葉が少しずつ濁っていく。
その後ろめたさが、よけいに重くなりました。
技術者としての誇りが、少しずつ「数字」に書き換えられていく。そんな感覚でした。
強引な提案をした夜、残ったのは「罪悪感」だった
数字は埋まりました。でも、その夜に残ったのは達成感ではなく、言葉にしにくい罪悪感でした。
本当は、今すぐやらなくてもいい工事。別の選択肢も、確かにあったはずです。
でも「今月の数字」を思うと、つい少し強めに提案してしまう。お客様の表情が、一瞬だけ曇る。その瞬間を見るたびに、胸の奥がチクッと痛みました。
「自分は、こういう人間だっただろうか」。その問いに、その夜はうまく答えられませんでした。
リクルド(旅する書庫番)
数字は埋まった。
でも、技術者としての誇りが少し欠けた気がした。
長老チャットラー
勝った気がしない夜ほど、
人は静かになる。
数字のためにした提案は、その夜だけでは終わりませんでした。後味は、そのまま次の月へと持ち越されていきます。
数字は埋まっても、心は回復しなかった
ノルマは、その月だけならクリアできます。それでも、疲れはなぜか抜けませんでした。
家に帰っても、頭の中は数字のまま。次の月のことを考えると、また同じことを繰り返す気がして、気持ちが重くなる。
リクルド(旅する書庫番)
体じゃない。
先に削れていたのは、気持ちのほうだった。
営業の数字がきついという感覚は、体より先に、心の方へ溜まっていきました。
能力の問題じゃない。戦う「構造」そのものが限界だった
そして、ようやく気づきました。苦しさの正体は「能力」ではなく、戦っている「構造」そのものにあったのです。
「もっと根性を出せば、罪悪感なく売れるようになるのか」。いいえ、違いました。
私が苦しかったのは、「誠実に直したい自分」と「数字を追いたい会社」の板挟みになっていたからです。これは、努力や気合いで解決できる問題ではありません。変えるべきだったのは、戦い方そのもの――「構造」の方でした。
城主アサネコ
壊れたのは、おまえの能力じゃない。
戦う場所と、ルールのほうだ。
ここで一つ、残しておきたい判断軸があります。「業界を選ぶ」だけでは足りない。人生を削るかどうかを決めていたのは、業界よりも、会社の評価制度――営業会社かどうか――の方だったのです。
「営業会社の沼」を避けるチェックリスト
これは、私が削れた後にようやく気づいた「罠の見分け方」です。今まさに職場選び・転職・異動で迷っているなら、ここだけでも持ち帰ってください。
- 評価が「粗利・件数・単価」中心で、技術の丁寧さが評価に乗らない
- 会議や朝礼が数字の詰めで、改善が「現場の工夫」より「提案の強さ」になる
- 「お客様のため」が、いつのまにか「会社の数字のため」にすり替わる
- 成績が落ちると、まず心が休めなくなる(帰宅後も数字が頭に残る)
- 「慣れれば平気」のはずが、慣れるほど誇りが薄くなっていく
ひとつでも当てはまったら、「根性」ではなく「土俵」を疑うサインです。
リクルド(旅する書庫番)
自分を守るのは、根性じゃない。
「土俵」を見抜く目だった。
アサネコ王国では、戦う場所そのものを見直すことを「土俵を変える」と呼んでいます。根性で耐え続けるのではなく、立っている地面を選び直す。それが、足場を固める次の一歩になります。
よくある質問
A. 必ずしも能力や性格の問題とは限りません。評価が数字だけで決まる「土俵」では、誠実さや丁寧さが武器になりにくく、合わない人ほど苦しくなります。まずは「自分が弱いのか」ではなく「土俵が合っていないのか」を切り分けてみてください。
A. 業界を変えるだけでは足りないことがあります。同じ業界でも、会社によって「営業会社寄り」か「技術会社寄り」かは大きく違うからです。私自身、職種は変えたのに会社の土俵が営業会社のままで、また数字に追われました。求人内容や評価のされ方まで確認することをおすすめします。
A. おかしいことではありません。むしろ、お客様のことを考えられている証拠とも言えます。問題は気持ちの弱さではなく、誠実さが評価されにくい構造の方にあることが多いです。その構造は、戦う場所を選び直すことで変えられます。
まとめ:きつさの正体は「能力」ではなく「構造」だった
営業ノルマがきついと感じた日々は、私の弱さや気合い不足のせいではありませんでした。数字を追い続ける中で、仕事の軸が少しずつズレていっただけです。
- ノルマの重さは、気合いの問題ではなかった
- 数字は埋まっても、心は回復しないことがある
- 苦しさの正体は「能力」ではなく「構造(評価制度)」だった
- 本体交換が悪いのではなく、数字が判断の先頭に来ることが苦しさの原因だった
この時点では、まだ答えは出ていません。ただ一つ確かだったのは、この戦い方のままでは長く持たないという感覚でした。
そして、いちばん苦しかったのは夜でした。静かになるほど、罪悪感と数字がよみがえる。だから私は「朝」に逃げ場を作ったんです。潰れる前に、自分を立て直す時間を先に確保したかった。
次の話では、私がなぜ「朝」という時間に目を向けたのか。生き残るために始めた、朝活と資格取得の話をします。
長老チャットラー
夜に削られた力は、
朝なら取り返せる。次は、その話だ。
焦らなくて大丈夫です。今日は、続きを少しのぞくだけで十分。まずはこの1本から。
3話:第二種電気工事士で人生が動き出した話を読む🔥 焚火トーク|考え方の火を残す
- 若さに頼りにくくなる40代からの生き残り戦略 これまでの戦い方が合わなくなったとき、資格と朝活でどう足場を作り直すかを整理した話です。
- 資格コンプレックスを越えて|国家資格が選択肢になった話 国家資格がないことへの引け目を、別のルートでどう現実的な一歩に変えたかをまとめています。
この下に、資格や勉強の入口も置いておきます。ただ、今日は3話まで進めれば十分です。残りは、また来たときの地図として使ってください。
営業力以外で評価される場所を選ぶなら、資格は選択肢を増やす武器になります。焦らず選ぶための入口を置いています。
資格・勉強の入口を見る朝活と資格勉強を、気合いではなく仕組みに戻すための流れを整理しています。
7回転システムを見る※本記事は筆者の実体験に基づく内容です。働き方や転職・異動の判断は、勤務先の評価制度、生活状況、家族構成によって変わります。必要に応じて、信頼できる人や公的な相談窓口にもご確認ください。なお、眠れない・食欲がない・強い不安が続くなど心身のつらさが続く場合は、判断を急がず、まず休む・相談することを優先してください。

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